CANADA'S WINDVIEW

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パンデミックインフルエンザワクチン製造過程とスケジュール (WHO)

パンデミック(H1N1)2009 要点説明 7



2009年8月6日 ジュネーブ

パンデミックを起こす可能性を持ったインフルエンザの新しい株が一旦分離同定されてから認可されたワクチンが最初に供給されるのはおよそ5-6か月かかる。
これらの期間が必要なのは、多くの一連の段階を含むからであり、これらの段階は完結するのに各々ある程度の時間を要する。
ワクチン開発過程の開始(ウイルスのサンプルを入手)から終了(使用可能なワクチンが入手できる)までを以下に要約した。


WHO協力センターの活動


1. 新型ウイルスの同定: サーベイランス目的のネットワークの一環として、世界中の研究所は日常的に検体をを収集し、これらを解析用としてインフルエンザに関するWHOリファレンス協力センター及び研究協力センターへ提出している。
センターが現在流行している株と決定的に異なる新型インフルエンザを検出し、その発見をWHOに報告した時、パンデミックワクチン製造への第一段階がスタートする。


2. ワクチン製造用株(ワクチンウイルス)の準備: 第一にウイルスをワクチン製造使用に適合させなければならない。
ワクチンウイルスを作製するためには、危険性を低減させ、鶏卵で育ちやすくさせ(最も多くのメーカーが採用している製造法) 、実験室の標準ウイルスと混ぜて、緒に育てる。
しばらくしてから、実験室株の内側成分とパンデミック株の外側成分からなる混合ウイルスが形成される。
この混合ウイルスを準備するのに大雑把に3週間かかる。

※ワクチンウイルスは卵の中で育てられる。というのもインフルエンザウイルスは卵の中でよく育つし、卵は容易に入手可能だからである。


3. ワクチン製造用株の検証: 混合ウイルスが準備できたら、それが本当にパンデミック株の外側タンパクを作り出すか、安全か、そして卵の中で育つかどうかを確かめるテストを行う必要がある。
大雑把にもう3週間かかるこの過程が完結した上で、ワクチン株は製造メーカーに配布される。


4. ワクチンテスト用試薬(参照試薬も)の準備: 並行して、WHO協力センターは、どれくらいの量のウイルスが生成されたかを計測することができ、それら全てが正確な量のワクチンをパッケージしているか保証する標準化された材料物質(試薬)を作製し、全てのワクチン製造メーカーに配布する。
これは少なくとも3か月掛かり、しばしば製造メーカーにとって障壁となる。


ワクチン製造者の活動


1. ウイルス発育環境の最適化: ワクチン製造メーカーは、WHOの研究室から混合ワクチンウイルスを受け取ると、卵中での異なった生育環境を試し、最良の条件を探る。
この過程は大雑把に3週間掛かる。


2. 大量生産用ワクチンの製造: 大部分のインフルエンザワクチン製造は、9日から12日目の受精鶏卵で行われる。
ワクチンウイルスは何千もの卵に注入され、ウイルスが増殖する2-3日間培養される。
何百万ものワクチンウイルスを含む卵白で、それらが培養され、そしてそのウイルスは卵白から分離される。
一部純粋なウイルスは薬品で死滅させる。
ウイルスの外側蛋白が精製され、結果が数百リットル、数千リットルの精製ウイルス蛋白であり、それらは抗原と呼ばれ、ワクチンの有効成分となる。
各々抗原のバッチもしくはロットを製造するのに約2週間かかり、新しいバッチ製造は数日後とに開始される。
バッチがどれ程大きくなるかは、製造メーカーがどれだけ多くの卵を入手し、植え付け、培養するかによる。
もう一つの因子としては、卵ごとの生産性である。
一つバッチが出来上がると、ワクチン必要量が製造できるまでその過程が繰り返される。


3. 品質管理: これは上記のように、WHOの研究室からワクチンのテスト試薬が供給された時だけ可能である。
それぞれのバッチがテストされ、大量生産用抗体の無菌性が検証される。
この過程は2週間掛かる。


4. ワクチン充填と公開: ワクチンのバッチが期待された抗体濃度になるよう薄められ、バイアルかシリンジに詰められ、ラベルを貼られる。
そのうちのいくつかで次のテストが行われる:
・滅菌はされているか
・蛋白濃度は確かか
・動物においてのテストで安全かどうか
この過程は2週間掛かる。


5. 臨床試験: ある国々では、新しいインフルエンザワクチンができる度に、それが期待通りの効果を示すかどうか何人かの人々でテストしなければならない。
これには少なくとも4週間掛かる。
いくつかの国々では、毎年類似のワクチン準備で多くの臨床試験が行われているため、新しいパンデミックワクチンも同様の作用を示すと想定され、新たな臨床試験は必要ではない。


規制当局の活動 - 承認


ワクチンが販売され人々に接種される前に、規制承認が必要である。
各々の国には、独自の規制当局と法律がある。
もしワクチンが季節性インフルエンザワクチンと同じ過程で、同じ製造工場で作られるのならば、非常に迅速に行うことができる(1-2日)。
いくつかの国々の規制当局は、ワクチンの承認の前に臨床試験を要求するかも知れないが、そうなるとワクチンが入手できるようになる前にその分時間が掛かる。

最良のシナリオで完全な過程を経れば、5-6か月で完了するだろう。
そうして最初のパンデミックワクチンの最終ロットが配布でき、使用可能となる。