CANADA'S WINDVIEW

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抗ウイルス薬使用の勧め (WHO)

パンデミック(H1N1)2009 要点説明 8


2009年8月21日 ジュネーブ

WHOでは今日、H1N1パンデミックウイルス感染管理における抗ウイルス薬使用に関するガイドラインを検討している。

ガイドラインは、抗ウイルス薬の安全性と効果についての研究全てを検討している国際的な専門家集団が賛同したものを集約している。
重症化や死亡の防止、入院を減らしたり、そして入院期間短縮のためにオセルタミビルとザナミビルの使用が強調された。

パンデミックウイルスは現在、これらの薬の両方(ノイラミニダーゼ阻害剤として知られている)には感受性があるが、 2番目のクラスの抗ウイルス薬(M2阻害剤)には耐性がある。

世界的に見て、パンデミックウイルスに感染した大半の患者は、医学的治療を受けなかったとしても、典型的なインフルエンザの症状で1週間以内で完治するということが経験的に知られている。
元々健康的で基礎疾患がない患者の場合、抗ウイルス薬による治療は必要ない。

個々の患者で見た場合、初期治療は、臨床評価とコミュニティーにおけるウイルスの流行状況を基に決定されるべきである。

ウイルスの流行が広がっている地域では、臨床医は、インフルエンザ様症状をもってパンデミックウイルス感染だと見なすべきである。
治療の決定は、検査室がH1N1感染だと確定するのを待たずに行われるべきである。

この勧告は、H1N1ウイルスが急速に優勢株になっているという全ての蔓延現場からの報告により支持されたものである。


重症例における迅速な治療


専門家により評価されたエビデンスは、オセルタミビルが肺炎(パンデミックでも季節性インフルエンザでも死亡原因となりうる)のリスクや入院の必要性を有意に軽減させる可能性を示している。

重篤な基礎疾患を持つ患者や症状が悪化してきた患者に対しては、WHOは可能な限り早急にオセルタミビルを投与するよう推奨している。
研究によれば、理想的には発症から48時間以内だが、早期治療がより良い臨床転帰に強く結び付くということである。
重症例や悪化している症例では、開始が遅かったとしても治療を行うべきである。
理由があってオセルタミビルが入手できなかったり、使用できない場合、ザナミビルを使用すればよい。

この勧告は、全てのグループ、すなわち妊婦や、若年者・乳幼児を含めた全年齢層の患者に適応される。

重症化の危険性が増している患者には、WHOはオセルタミビルかザナミビルの投与を推奨している。
また、これらの患者には、発症後検査室の結果を待たず可能な限り早急に治療を開始するべきである。

妊婦はリスクが増すグループに含まれるので、WHOは、発症後可能な限り早急に抗ウイルス薬治療を行うよう推奨している。

同時に、見た目の病状からは、全てのもしくは大部分の重症例すら確実には予想されない。
世界的に見れば、現在約40%の重症例は、50歳未満の元々健康な小児や成人に見られる。

これらの患者の何人かにおいては、通常発症後5-6日で突然もしくは非常に急速な症状悪化を経験する。

臨床症状の悪化は、肺組織の壊死や抗生剤に反応しない原発性ウイルス性肺炎、そして心臓・腎臓・肝臓を含む多臓器不全に特徴付けられる。
これらの患者は、抗ウイルス薬も用いつつICUでの管理が必要となる。

臨床医、患者、在宅ケアを行う者はより重篤な病態へ移行していることを示す徴候に注意を払い、オセルタミビル投与を含めた緊急対策をとる必要がある。

病状が重症もしくは悪化する場合には、臨床医は、オセルタミビルを通常より高用量投与することや、より長期間投与することも考慮してよい。


小児における抗ウイルス薬の使用


最近の臨床レビュー論文2つ[1,2]を検討してみると、小児の抗ウイルス薬投与の可能性についての疑問がいくつか浮上してくる。

その2つの臨床レビュー論文は、WHOとその専門委員会がガイドラインを策定した時に検討したデータを使用しており、勧告に全て反映されている。

WHOは、重症もしくは病状の悪化している小児と、より重症化のリスクか合併症が起こるリスクのある小児に対しては迅速な抗ウイルス薬治療を推奨する。
この勧告は、5歳未満の全ての小児が対象で、この年齢層は重症化のリスクが高くなっている。

そうでなければ、5歳以上の元々健康な小児は、病状がしつこく続いたり悪化しない限り抗ウイルス薬の投与は必要ない。


全ての患者における危険な徴候


臨床医、患者、在宅ケアを行う者はより重篤な病態へ移行していることを示す徴候に注意を払う必要がある。
H1N1感染が確定もしくは疑われる患者において次に挙げるいずれかの危険な徴候が認められる時、症状が急激に悪化しているものとして医学的治療対象となる。

・活動時もしくは休息時における息切れ
・呼吸困難
・蒼白になった時
・血痰や色の付いた痰
・胸痛
・異常な精神状態
・3日以上続く高熱
・血圧の低下

子供においては、次の点も危険な徴候に含まれる:
速い呼吸や呼吸困難、覚醒レベルが悪い、目を覚ましにくい、遊びたがらないか遊ばない

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[1] Neuraminidase inhibitors for treatment and prophylaxis of influenza in children: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Shun-Shin M, Thompson M, Heneghan C et al. BMJ 2009;339:b3172; doi:10.1136/bmj.b3172
[2] Prescription of anti-influenza drugs for healthy adults: a systemic review and meta-analysis. Burch J, Stock C et al. Lancet Infect Dis 2009; doi:10.1016/S1473-3099(09)70199-9