駆瘀血剤について(駆瘀血して病を治す薬)
漢方医学の独特の概念である瘀血の治療薬を称して駆瘀血剤と言います。現代医学の消炎剤などに相当しますが、難症痼疾となった種々の病状を起死回生させる効果が期待できます。瘀血とは血が滞り、種々の障害を来していることを指します。駆瘀血剤は、一般的には婦人科疾患に用いられますが、抗血栓作用、抗動脈硬化作用もあり、中年以降の脳血管疾患、循環器疾患等にも積極的に用いるべき薬です。
1. 舌に部分的に茶色の斑点、あるいは青紫から紫の斑点……瘀斑
3. 月経血に血塊が混じる、経血が紫黒
5. 大食し、怒り悲しみの訴えが異常、物忘れなど精神症状を伴う
舌が青から紫色……舌質青紫、舌質紫
舌下静脈が怒張し
2. 皮膚に細絡舌下静脈が怒張し
3. 月経血に血塊が混じる、経血が紫黒
生理前に乳房腫痛と下腹の張り
血海(けっかい)の圧痛
4. 腹診にて小腹急結、あるいは左右の臍傍に充実した抵抗と圧痛があり、いずれも熱を触知血海(けっかい)の圧痛
5. 大食し、怒り悲しみの訴えが異常、物忘れなど精神症状を伴う
1. 桃仁・牡丹皮などの寒性駆瘀血薬 | 強く駆瘀血するため冷やす性質がある |
2. 当帰・川芎・延胡索・牛膝・紅花・サフランなどの温性駆瘀血薬 | 活血作用あり |
3. 水蛭・しゃ虫などの動物性駆瘀血薬 | 強力に駆瘀血する |
寒性駆瘀血剤 | 桃核承気湯、桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、「通導散」 |
温性駆瘀血剤 | 温経湯、芎帰調血飲、安中散、「当帰芍薬散」 |
動物性駆瘀血剤 | 大黄しゃ虫丸、下瘀血丸、抵当丸 |
※駆瘀血剤の使用上の注意
瘀血があると認められても裏寒や気虚が著しければ駆瘀血剤を使用せず、まずは身体を立て直してから駆瘀血剤投与を考える習慣をつける必要があります。清熱瀉下剤と同様に駆瘀血剤を闇雲に投与すると効果が無いばかりか、裏寒・気虚を増悪させ、患者さんを無闇に苦しめることになるからです。桃核承気湯(TJ-61) | 桂枝・桃仁・大黄・芒硝・甘草 | のぼせて神経症状を惹き起こしたものを治す方剤である。小腹急結を目標にして使用する。上逆の甚だしい、急峻な症状を呈する瘀血症状のある精神疾患、不定愁訴、婦人科疾患、眼疾患、泌尿器科疾患などに使用。精神不安、譖語、狂状などの神経症状を伴うことが多い。 |
桂枝茯苓丸(TJ-25) | 桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬 | 臍傍や下腹に充実した抵抗を触れ、圧痛を訴えることが多い。全体として桃核承気湯よりは静的で固定的である。脈は緊張があり沈んで遅い場合が多い。婦人科疾患、眼疾患、泌尿器科疾患、肝炎、乳腺腫、高血圧、慢性腎炎、座骨神経痛等広く使用。 |
大黄牡丹皮湯(TJ-33) | 大黄・牡丹皮・桃仁・芒硝・瓜子 | かつて虫垂炎に用いられた方剤。 |
通導散(TJ-105) | 大黄・当帰・芒硝・枳実(枳穀)・厚朴・陳皮・木通・紅花・蘇木・甘草 | かつて鞭打ちの刑の後に用いられた方剤。打撲傷に用いて効果あり。クラッシュ症候群にも用いる機会があると思われる。 |
よく用いられる温性駆瘀血剤
温経湯(TJ-106) | 半夏・麦門冬・当帰・川芎・芍薬・人参・桂枝・阿膠・牡丹皮・甘草・生姜・呉茱萸 | 気血虚して寒冷を帯びる諸婦人病に用いる。手掌の煩熱と口唇の乾燥、下腹の膨満感または不快感、腰部の冷え、のぼせ等を目標とする。 |
芎帰調血飲 | 当帰・川芎・地黄・白朮・茯苓・陳皮・烏薬・香附子・牡丹皮・益母草(ヤクモソウ) | 産後一切の諸病、気血虚損、脾胃虚弱、血を去ること過多するを治す。 |
安中散(TJ-5) | 桂枝・延胡索・牡蠣・茴香(ウイキョウ)・縮砂(シュクシャ)・甘草・良姜 | 胃の痛みに用いる薬であるが延胡索が配されており軽い温性駆瘀血剤である。甘いものを食べすぎ胸焼けをしやすい痩せ気味のひとに用いる機会が多い。胃腸虚弱タイプのひとの駆瘀血剤。 |
※ 芎帰調血飲はクラシエ、太虎精堂にエキス剤がある。